共存できないニホンジカたち

1 ニホンジカの増加の現状

ニホンジカの急増による食害は全国的な問題となっていますが、滋賀県の現状と対策は次のとおりです。

「滋賀県ニホンジカ第二種特定鳥獣管理計画(第3次)」によれば、

 ・滋賀県での適正生息数は約8,000頭と言われる中、平成27年度の推定生息数の中央値は71,100頭(50%信用区間56,000~92,400頭)  

 で、同22年度の47,000~67,000頭から大幅に増えた。

 ・平成27年推定生息数は、地域別では湖北が31,300頭(25年26,900頭)と大幅に増加し、これと反対に他の地域は、湖東14,100頭(同

 14,600頭)、湖西16,100頭(同18,200頭)、湖南9,600頭(同11,200頭)と減少に転じている。

 ・ニホンジカの被害は、これまでの農林業被害に加え、森林生態系の衰退による公益的機能の低下が顕著になっている。

 ・捕獲頭数は県全体で年間1万頭以上で2019年は目標19,000頭に対し15,803頭となっている。今後、19,000~14,000頭の捕獲目標を定

 め、湖北地域を除き個体数の半減を目指す。

伊吹山周辺でも県や市により銃器や箱罠などでニホンジカの駆除が進められていますが年間100頭に程度に止まっています。このことは、湖北地域に高い密度で生息するニホンジカが年齢2歳の春に出産するという繁殖の増加スピードを考えると、残念ながら減少傾向に転じるに効果は少ないと思います。


2 ニホンジカの増加要因

ニホンジカ増加の要因は次のように様々ことが挙げられています。

①狩猟者の減少(特に若い世代の減少が顕著です)

②地球温暖化による気温の上昇(100年で1°c以上)で少雪となり冬季死亡率が減少

③昭和の時代の拡大造林政策による皆伐でニホンジカのエサになる下草等が一時的に増加

④戦後ニホンジカの乱獲により生息数が激減したため、ニホンジカの保護政策が生息数が増加に転じた以降も1990年まで継続されたこと

⑤山村の人口減少、田畑の荒廃で生息場所が拡大したこと

以上の要因に加え、次のようなニホンジカの増加特性があることが指摘されています。

①1,000種以上もの植物を餌にできること。

②広範囲に移動可能なこと。

③群れをつくること。

④高い繁殖率を有すること。(雌ジカは満1歳で繁殖に参加し2歳の春に出産)


3 伊吹山におけるニホンジカの現状

山頂の獣害防止ネットの中で

山頂は天然記念物「伊吹山頂草原植物群落」として国指定されており、ニホンジカの食害を防止するため3㎞にわたり獣害防止柵が設置されています。

しかしながら、ニホンジカはネット内の灌木地帯を住みかとして利用し、執拗にネットを破り、内部への侵入を図っています。

天然記念物全体の価値が損なわれる前に、住みかとなる灌木等の除去が必要です。


7合目辺りをランするシカ

ニホンジカは普通は日中、人目につくところには現れず、伊吹山でも樹林帯の中に潜んでいることが多いです。

最近は人から襲われることがないことを学習したのか、昼間でも確認することが多くなっています。写真は登山者のすぐ近くを群れでランするシカたちで、突然の走るシカの登場にきっとたいそう驚かれたでしょう。衝突など事故にならずに良かったです。


ナイトサファリか、3合目

これは3合目の夜の写真です。

幸い、3合目では獣害防止ネットで囲んだエリアは、定期的なメンテナンスも行われていることからニホンジカによる影響はありません。

しかしながら、ネット外ではほとんど花は咲きません。クララやイブキトリカブトなどシカの忌避植物だけが咲くだけです。

このように夜は、まるでナイトサファリのようにシカが群れています。