伊吹山の魅力

1 伊吹山を彩る花々

四季折々の様々な花々を紹介します(ここをクリック)

①日本の中央に位置する伊吹山は北方系植物の南限となり、南方系の植物が北上して生息する

②1億5千万年前に隆起した古い山で多くの固有種がある

③およそ3億年前は赤道近くの海底火山だったため堆積した珊瑚が石灰岩となり石灰岩質を好む植物も多く

④冬の寒冷な気候から亜高山性や多雪地帯の植物も多い

⑤独立峰で年中風が強く、霧の発生が多い草原が発達した

⑥そして昭和30年代まで地元民が牛馬のエサや田畑の肥料に草刈りが行われた

など様々な要因で、シダ植物以上の高等植物が約1,300種も有する伊吹山は古くから植物の宝庫と言われてきました。



2 伊吹山の固有種が多い山(ここをクリック)

伊吹山はその成り立ちを振り返ると、

・3億年前に赤道付近の海底火山として誕生。

 その海底火山の上にサンゴ礁が堆積し石灰岩質となった。

・だんだんと南から今の位置に移動し1億5千年前に隆起した。

このように非常に古い山であり、次のような伊吹山の固有種が今なお存在します。

コイブキアザミ(右の写真)、イブキアザミ、イブキヒメヤマアザミ、ミヤマコアザミ、イブキコゴメグサ、ルリトラノオ、コバノミミナグサ、イブキタンポポ、イブキレイジンソウ

 

なお、これらの固有種もニホンジカの食害や外来種の侵入によりその生息個体数を減らしています。

 

 


3 薬草の特別多い山(ここをクリック)

古くから植生が豊かな伊吹山は、薬草が特別に多い山としても知られてきました。(右の写真はイブキトリカブト)

・平安時代の927年(延長5年)に編纂された延喜式に朝廷へ献上された薬草について近江が73種で1番、次いで美濃が62種と記され、これは両国にまたがる伊吹山に薬草が多かったことが要因と考えられています。

・織田信長がポルトガル人に3000種もの薬草を50haの薬草園で作らせた伝説(江戸時代の書物に記載)もあり、欧州原産の植物も伊吹山のみに残存することがその証左とも言われる。

・江戸時代には薬草栽培を奨励した8代将軍徳川吉宗の指示で、本草学者などの採薬師が伊吹山に調査に訪れた。

・大正時代には滋賀県伊吹山薬草採集取締規則で28種(のち昭和11年に30種)の薬草採取を許可制にした。


4 古代から歴史の舞台に

伊吹山は、歴史の舞台にはたびたび登場(ここをクリック)

①「日本書紀」や「古事記」に荒ぶる神を鎮めるため日本武尊が伊吹山に向かったが敗れた。

②平安時代以降「日本七高山」の一つに数えられ山岳信仰の山として山伏等が修行し、二社四寺の一山組織が成立した。

③戦国時代には近江の守護京極氏が館や山城を構え、織田信長に対峙した。(右の写真は上平寺城跡)

④江戸時代には、全国で5,400体の神仏像を残した円空さんや、槍ヶ岳を開山し、笠ヶ岳を再興した幡隆さんが修行をした。

 

 



5 王者イヌワシが生息する山

イヌワシ、それは生態系の頂点に立つ王者。

全国でわずかに約500羽、滋賀県では4ペアで、そのうちの1ペアが伊吹山に生息しています。野生のウサギやヘビなどを餌とするイヌワシの行動範囲は100㎢と言われ、イヌワシはいろんな動物や植物が豊かな自然がある場所でないと生きられません。

イヌワシが生息する伊吹山はまだ豊かな自然が残っている証拠です。



6 ヒメボタルが生息する山

伊吹山の山頂辺りには陸生のホタル、ヒメボタルが生息し、毎年7月の梅雨終盤の時期に光の乱舞を見せてくれます。ヒメボタルの大きさは1㎝未満でゲンジボタルより小さいが、光は強くパッパッと短い間隔で発光する特徴があります。(写真は伊吹山ドライブウェイHPより)

なぜ、山頂に生息しているのでしょうか。それは、

①伊吹山は石灰岩が多く、ホタルの幼虫のエサになるカタツムリの宝庫(過去の調査では約80種以上と報告)で、伊吹山系の特産種のヒルゲンドルフマイマイやミカドギセル、またイブキゴマガイやイブキクロイワマイマイなどイブキの名前を持つ陸貝も生息し、明治初期から伊吹山は陸貝研究の対象地だったこと、

②伊吹山の地理的な特性として、年中強い風が吹き年間300日も霧が発生して草原が広がり、住みやすいことがあげられます。

 


7 積雪量が世界一の山、霧の日が300日もある山

日本海からの雪雲が直接ぶつかる伊吹山は、1,377mという低い標高の割には多量の降雪があります。1927年(昭和2年)2月14日には山頂で11m82㎝の積雪を観測しました。これは今も世界一の観測記録です。(なお、昭和56年の豪雪時は8m20㎝)この記録は当時の伊吹山測候所が観測したものです。

伊吹山測候所は滋賀県知事の提唱を踏まえ大正8年1月1日に県立彦根測候所付属伊吹山観測所としてスタートしました。昭和4年に国営に移管され、冬季も交代制勤務で観測が続けられました。平成元年に無人観測所となり同13年に観測を終了、同22年に測候所は解体されました。

また、伊吹山は独立峰で冬は敦賀湾からの北西風、夏は伊勢湾からの南東風がぶつかり、山頂が霧や雲で覆われる日数は年間300日もあり、また通年強い風が吹きます。このような要因も植生豊かな伊吹山を育てたと言えます。

 


8 全方位の展望が楽しめる山

「日本百名山」の著者深田久弥も伊吹山に登った際に、その展望に感銘を受け「山頂からの第一の獲物は遠く北に茜色ににじんだ純白の白山で、こんな角度からこんな美しい白山を眺めたのは初めてであった。」また「真南に大きな頭をもたげているのは霊仙山、その奥に連なっているのは鈴鹿の山々である。」と記している。(右の写真は4月の山頂からの白山連峰)

それ以外にも、大きく広がる琵琶湖、遠く輝く伊勢湾、空気の澄んだ日に御嶽山、乗鞍岳、槍・穂高が望め、第1級の展望です。

  山頂からの大きく広がる琵琶湖       太陽の陽に輝く伊勢湾      遠く槍・穂高(左)乗鞍岳(中央)御嶽山(右)